性交痛を軽減する治療法

セックスの最中や後に痛みを感じる「性交痛」にはさまざまな原因があり、それぞれ対処法が異なります。ここでは、婦人科形成を専門とする女性医師・満行みどり先生に監修いただき、性交痛の治療法を原因別にまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

加齢(更年期、閉経の場合)

ホルモン療法

ホルモン治療イメージ

治療内容

更年期で減少したエストロゲンを補充する治療法。「Hormone Replacement Therapy」の略称で、「HRT」とも呼ばれます。

日本ではまだメジャーとは言えない治療法ですが、欧米や北欧といった更年期治療の先進国ではHRTを受ける女性も徐々に増加中。

日本で処方されているのは内服薬・貼付剤・ジェルなどの外用薬で、健康保険が適用されます。

メリット

ホルモン療法は、萎縮性膣炎による膣粘膜の乾燥に劇的な効果を発揮するのがメリット。膣の乾燥による性交痛がなくなり、ストレスなくセックスを楽しめるようになります。

デメリット

人によっては使用開始から1~2ヶ月ほど胸やお腹の張り、胃のむかつき、おりものの増加などが見られることもあります。また、ホルモン治療になるため、ご自身にがんがあったり身内にがん患者がいる場合は、抵抗感を覚える人もいます。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

更年期を迎える年齢の女性に対して、最近の婦人科でまず提案されるのがこのHRTです。それに特に抵抗のない方は、継続していただければと思います。

ただ、ホルモン治療は長期間続けるとがんのリスクが上がるため、「ホルモン治療には抵抗がある」という方も時折いらっしゃるようです。このページに掲載しているように、他の治療法もあるので、いろいろな選択肢に目を向けてみてください。

  • 費用の相場:1ヶ月あたり3~5万円ほど
  • 考えられるリスク:短期投与ではがんのリスクはほとんどありませんが、5年以上の長期投与になるとがんの発生・進行を早めてしまうことがあります。

漢方

漢方イメージ

治療内容

自然界に存在する植物・鉱物などの生薬を組み合わせた、漢方薬による治療。主に、更年期の性交痛治療に用いられます。

患者の病態を表す「証」に合わせて処方するのが特徴で、同じ性交痛でも「実証タイプ」の女性には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)・「中間証タイプ」には加味逍遙散(かみしょうようさん)・「謙虚タイプ」には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)がよく用いられています。

メリット

漢方療法は体の免疫力や自然治癒力を高める治療法のため、性交痛の原因が明確になっていない場合であっても、症状の軽減・改善が期待できます。保険適用なので治療費が抑えられるのもメリットです。

デメリット

即効性に乏しいこと。すぐに症状を治したいという方には向きません。また、健康維持・増進のために漢方を購入する場合は、保険が適用されず、自己負担となります。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

体質と合えば穏やかに効果を発揮する漢方薬。私個人としては、これで「性交痛が治る」というよりは、「性交痛が起こりにくい状態に徐々に体を整えていく」イメージですので、他の治療との併用という形でおすすめしています。

本当に効くかどうかに関しては、まず実際の体質に近い「証」を診断してもらう必要があります。漢方の場合はここが肝です。漢方取り扱い薬局のスタッフや専門医などに相談し、「証」を出してもらったうえで対応する薬を処方してもらうのが最も確実です。

ただし、そのようにして処方された漢方は保険適用外になるので要注意。保険適用になるのは、「医師が疾患を認め、その疾患に対して漢方薬が有効であると診断した場合」だけ。ご自身で健康維持・増進を目的に漢方を処方してもらう場合は、自費になります。

  • 費用の相場:1ヶ月あたり3,000~1万円ほど
  • 考えられるリスク:漢方は副作用が少なく安全性が高いと思われていますが、体質を表す「証」に合っていないと、症状を悪化させるなど思わぬ副作用が出ることもあります。

クリニックのマシンを使った治療

マシン治療イメージ

治療内容

超音波やレーザーなどの専用マシンを用いて、性交痛の軽減・改善を試みる治療法です。

  • インティマレーザーを照射するマシン…萎縮性膣炎の改善を狙う
  • 高周波を照射するマシン…コラーゲン生成を促進して膣の潤い増加を狙う
  • 超音波を照射するマシン…コラーゲン線維を収縮させて膣のたるみの引き締めを狙う

メリット

超音波・高周波・レーザーなど、どのマシンもメスを使わずに治療できるのがメリット。傷が残ることもありませんし、ダウンタイムも短いので日常生活・性生活にはほとんど影響がありません。

デメリット

治療法によっては繰り返し施術を受けないと効果が持続しないことがあります。また、自由診療となるため、保険が適用されません。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

更年期世代の女性の性交痛に対して、私がおすすめしているのは「インティマレーザー」と「高周波」を照射するマシンです。インティマレーザーを膣に照射すると、粘膜層まで温熱の刺激が届き、組織内のコラーゲン繊維が造成されるため、膣の潤い不足への効果が期待できます。また、高周波を膣に照射すると、粘膜のさらに下にある筋肉の層にアプローチ可能。メスを使用せずに、極小範囲の熱ダメージでコラーゲンの分解・再構築を促せます。

  • 費用相場:1回20万円前後
  • 考えられるリスク:体質や症状によっては、粘膜や周辺組織に腫れが見られることもあります。

病気の場合

投薬

投薬イメージ

治療内容

子宮内膜症やカンジダ・クラミジアといった感染症などの病気が原因の場合、薬剤による治療が行われます。

  • 子宮内膜症の場合…ホルモン剤や低用量ピル
  • カンジダやクラミジアの場合…抗生物質や抗真菌薬など

メリット

処方された薬をきちんと使用すれば、体への負担を最小限に抑えながら治療ができます。

デメリット

子宮内膜症・カンジダなどの感染症ともに、いったん良くなっても再発しやすいもの。症状が治まったからと油断せず、定期的な検査やケア、治療を継続するようにしましょう。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

感染症にはそれぞれ原因となる細菌があるため、それらを排除する薬を使用するのが定石です。性交痛の原因が感染症の場合も、基本的に薬物治療が選択されます。

また、感染後にセックスをした場合はパートナーに感染している可能性が高いため、2人一緒に診察を受けておいたほうが、その後の性生活に支障が出ないでしょう。

中には、パートナーが感染していることに気付かずセックスを続け、いつまでも治らないカップルもいますが、病気の状態が長く続くことは体に良くありません。不妊にも繋がりかねないため、悪循環を断ち切る必要があります。投薬は比較的手軽にできる治療ですので、婦人科で相談してみてください。

  • 費用相場:1ヶ月あたり3,000~8,000円ほど
  • 考えられるリスク:ホルモン剤や低用量ピルでは血栓症や不正性器出血、抗真菌薬では下痢・消化器系のトラブルが起こる可能性があります。

手術

手術イメージ

治療内容

子宮筋腫・卵巣腫瘍・子宮内膜症といった病気が原因の場合、症状によっては手術が適用されることもあります。

  • 子宮筋腫・子宮内膜症の場合…症状に応じて腹腔鏡下または開腹での子宮筋腫核出術(子宮を残す保存療法)、または子宮摘出術(子宮を全摘出する根治療法)が行われます。
  • 卵巣腫瘍の場合…腫瘍の大きさが5~6㎝をオーバーすると捻転・破裂の恐れが出てくるため、手術が選ばれます。

メリット

性交痛の原因となっている症状そのものを取り除けるため、セックスで痛みを感じることがなくなります。

デメリット

手術の場合は入院が必要ですし、体への負担も大きめです。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

今まで一緒に生きていた臓器、しかも女性が子供を授かる「子宮」にメスが入ること…そして時に丸ごと失うことは、病気の症状に苦しむのと同じくらいつらいことだと思います。

しかし、子宮筋腫・卵巣腫瘍・子宮内膜症といった病気が進行している場合、手術は日常生活や命を守る手段になります。どうか失うことだけでなく、生きることそのものに目を向けて、前向きな選択をしてください。

  • 費用相場:約20万円
  • 考えられるリスク:手術の内容によっては、その後妊娠できなくなったり、子宮という女性ならではの臓器がなくなることによるアイデンティティの喪失感に悩まされたりすることもあります。

処女膜が強すぎる場合

手術(処女膜切開)

手術イメージ

治療内容

硬く突っ張っている処女膜の一部を切開・切除し、細い糸で縫合して元に近い状態に整形する手術。

縫合糸は体に吸収されるものを使用するので、抜糸の必要はありません。手術は局所麻酔または静脈麻酔下で行われ、所要時間は15~20分ほどとなっています。

メリット

非常に簡単な手術なので、施術中・術後の痛みや出血はほとんどなし。処女膜を切開することでセックスがスムーズになり、痛みや出血をすることもなくなります。また、処女膜が元に戻ることはないので手術は1回だけでOKです。

デメリット

ダウンタイムが長く、術後1ヶ月くらいはセックスができないこと。また、シャワーは当日から可能ですが、入浴は1週間ほどできません。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

処女膜が硬い体質によって発生する性交痛は、ご自身の努力だけでは解決し難い問題です。クリニックでは、「処女膜切開」といった外科的な処置がとられます。

手術で膣の入り口を広げて挿入時の抵抗を減らし、スムーズな出し入れができるようにする方法です。

痛みがなくなれば、おそらく今抱いていらっしゃるパートナーとのセックスへの恐怖心もなくなるでしょう。

  • 費用の相場:10~20万円ほど
  • 考えられるリスク:切開する部分が適切でないと後遺症が残る恐れもあるため、確かな技術力を持った医師にかかることが重要です。

心因性の場合

カウンセリング

カウンセリングイメージ

治療内容

過去の性体験がトラウマとなり、性交痛が起きていると考えられる場合にとられる治療法。医師やカウンセラーと話すことで、セックスに対する不安や恐怖を払拭していきます。 治療には、症状・状況によっては年単位にも渡る長い時間がかかる・抗不安剤などの薬剤が処方されることもあります。

メリット

家族や友人などには話しにくい体験や思いを、専門家に聞いてもらうことで症状の軽減が見込めます。カウンセリングを続けて心の傷やストレスが癒されていくと、自然と性交痛も治まっていく傾向にあるようです。

デメリット

治療には個人差はありますが、長い時間が必要となることが考えられます。また、カウンセラーとの相性によっては効果を感じにくいという人もいます。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

過去のつらい体験を整理し、乗り越えるのに向いている治療法です。秘めていたかった部分をあえて他人に開示することで、今抱えている自分の本当の痛み・苦しみを受け入れられたり、「当時と現在では状況が違う」という認知のゆがみに気づいてトラウマを克服できたりするケースがあります。

相談に乗る心理士は相談内容を決して口外しないので、安心して話しましょう。ただし、相手も人間なので、お互いの相性が悪いと治療が進まない場合もあります。

「治る」といえる状態になるまでにかかる期間は、基本的に傷を抱えてきた期間と同じくらいだと言われています。長期戦になることを見越して、焦らず治療を受けましょう。

  • 費用の相場:30分あたり5,000~10,000円ほど
  • 考えられるリスク:他人に知られたくない性的な悩みを話すことが、新たなストレスとなったり、より嫌悪感が増えたりするケースもあります。

パートナーとの話し合い

パートナーとの話し合いイメージ

治療内容

性交痛があることをパートナーに伝え、2人で話し合って解決方法を探っていく方法です。 どのようにしたら痛みを減らせるか2人で試行錯誤することにより、最適な対策法が見つかる可能性もあります。

メリット

お互いの体や気持ちを知るため、愛情が深まり、思いやりを持ってセックスできるようになります。相手が性交痛をわかってくれているという事実が安心にもつながり、心身のリラックス効果も期待できるでしょう。また、セックスに限らず、お互いへの信頼感も増すと考えられます。

デメリット

性的な話題をするのが恥ずかしい場合、話し合い自体がストレスになる可能性も。また、伝え方によっては相手のプライドを傷つけてしまう恐れもあるので、一方に責任を押し付けたり糾弾し合ったりするようなやり方にならないよう、注意が必要です。

監修医師:満行みどり先生のアドバイス

リスクとして、関係がギクシャクしてしまう可能性もあるのですが、結局男女がパートナーとして歩んでいくには、何においても「お互いの意思を確認する」機会が必要です。 本音で話し合えない関係は、はっきり言ってしまうと将来性がありません。

お互い手を取って進んでいく未来のためにも、性交痛に限らず、伝えるべきことはきちんと伝え合える信頼関係を普段から築きましょう。

ただし、ただ言いたいことだけ並べて相手に押し付けてしまうのは、伝え方としてはNGです。(特に男性相手の場合は)相手のプライドを傷つけてしまわないよう言葉を選び、なぜこの話をしているのか、結局どうして欲しいのか、話し手の意図が伝わるよう話し合ってみてください。

  • 費用の相場:なし
  • 考えられるリスク:話し合いの仕方やパートナーの性格によっては、関係がギクシャクしてしまうケースもあります。繊細な話題なので、相手に伝わる伝え方を考えましょう。伝え方をアドバイスしてくれる医師もいます。

監修

満行(みつゆき)みどり先生

女性器治療に特化した医師

満行みどり医師

みどり美容
クリニック・広尾
満行みどり先生

満行みどり先生は女性器治療に特化した「みどり美容クリニック・広尾」の院長
ビバリーヒルズの専門トレーニング施設でライセンスを取得した日本人女性初の医師でもあり、デリケートゾーンの悩みを抱える患者さんに適切な治療を提供したいと日々尽力されています。

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