Case5:痛いのは更年期が原因?
更年期とは閉経する前後5年の期間です。日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳なので、一般的には45~55歳の女性が更年期に当たります。
婦人科形成に精通している女性医師・満行みどり監修のもと、更年期女性の性事情と痛みの原因をまとめているので、参考にしてみてください。
セックスの痛みに悩む
更年期女性たちのリアルな声
40歳を過ぎたあたりから感じにくくなり、濡れないので痛みをおぼえるようになりました。性感帯を愛撫されてもくすぐられても、感覚が鈍いというか…。これも年齢や更年期の影響なんでしょうか。以前は普通に気持ちよかったので、感じにくいタイプではないと思います。
40代半ばあたりからイライラやホットフラッシュなど、更年期特有の症状に悩まされるようになりました。性行為についても、膣のうるおいが減ってきているのか挿入が上手くいかず、夫のことは大好きなのにセックレスが続いています。今まで性行為にあまり積極的ではなかったんですが、最近は「このまま女性として枯れてしまうのは嫌だ」と思うようになりました。なにか改善方法はないかとネットや雑誌で調べています。
もともと濡れにくいタイプではありますが、更年期に入ってより濡れにくくなり、また挿入が痛いと感じるようになりました。ローションを使っても効果がなく、痛みのせいで夫とセックスする気になれません。私は手をつなぐだけでも幸せに感じるんですが、夫はそうではないようで「婦人科に行って診てもらう」「なにか薬を処方してもらおう」とまで言うようになりました。更年期ならこれぐらい普通と放置していたんですが、病院に行ったほうがいいのでしょうか。
子どもが独立し、今は夫婦2人の暮らしになりました。私はもう更年期と言える年齢ですが、夫は未だに夫婦生活を求めてきてくれます。応えたいという気持ちもありますが、もともと淡白だったことにくわえて性交痛を伴うようになり、SEXの時間が苦痛でたまらなくなりました。そんな私の様子に夫は不満を感じているようです。痛いのを我慢してこの先もずっと…と考えると、最近では離婚すら考えるようになってしまいました。
更年期になるとセックスが
痛くなる2つの原因
1.膣の乾燥
挿入の滑りを良くする膣分泌液は、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて分泌されます。更年期世代の女性は、閉経を機に卵巣機能が低下して、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少。そうすると膣分泌液の分泌量も減り、挿入の摩擦で痛みが生じやすくなります。
主な対処法
軽い痛みであれば、滑りをよくする潤滑剤(潤滑ゼリーなど)を使うことで、一時的に摩擦の痛みを緩和できます。
2.萎縮性膣炎(いしゅくせいちつえん)
エストロゲン不足で乾燥・萎縮した膣を放置していると、雑菌が繁殖して炎症が起こるケースがあります。これが「萎縮性膣炎」です。炎症が起こると、セックス時はもちろん日常生活(例:排尿や下着の擦れ)でも痛みが生じます。
主な対処法
痛みのほか、かゆみや黄色いオリモノ、においが気になる場合、萎縮性膣炎の可能性が高いので、婦人科を受診してください。炎症の状態によりますが、膣座薬や膣場を1~30日ほど投与するのが一般的です。
更年期の性交痛を改善するには
食生活など生活習慣を見直す
症状を緩和させるためには、日々の生活のバランスを整えていくことが大切です。
まずは食生活です。現在では食生活の欧米化が進んでおり、手軽に食べられるファストフードを多用している方もたくさんいらっしゃいますが、身体のことを考えるなら和食中心の生活が◎。「主食:副菜:主菜=3:2:1」のバランスを意識すると良いでしょう。可能であれば1日1~2回魚料理を取り入れると、よりGoodです。
また食生活だけではなく運動や休息面も見直してみましょう。運動は1週間に3~4回の頻度で行うことが望ましいですが、慣れていない人は無理をせず、可能な範囲で体を動かしてみてくださいね。
ホルモン補充療法(HRT)を行う
更年期の症状を緩和させるための一般的な方法として、医療機関を活用し、ホルモン補充療法を行う…という手段があります。
更年期に差し掛かるとエストロゲンが欠乏し、のぼせやほてり、発汗といった更年期特有の症状が発生するほか、性交痛などの症状が顕著に表れるようになります。また気分の変調や関節痛なども生じやすくなります。ホルモン補充療法(HRT)によって不足したエストロゲンを補うことで、更年期ならではの不快な症状を改善し、QOL(生活の質)向上にも大きく期待できるのです。
ただ更年期と一言に言っても、さまざまなフェーズがあります。閉経はしているのか、出血を望むかなどによって治療法も異なってきます。またがん家系だから、あまりホルモン補充療法(HRT)を行いたくない…という方もいるでしょう。まずは医師と相談して、どういった治療法を行っていくか話し合っていくことが大切です。
潤滑剤・潤滑ゼリーなどを使用する
エストロゲンが欠乏する更年期には、膣内のうるおいも低下してしまいます。うるおいが不足していると、挿入がうまくいかなかったり男女ともに痛みを感じるようになります。そんなときは潤滑剤や潤滑ゼリーを使用してみるとよいでしょう。自然なうるおいがプラスされて、性交痛を改善する効果が期待できます。
注意してほしいのは、使用するのはローションではなく、潤滑剤または潤滑ゼリーという点。ローションは本来男性用につくられたアイテムで、女性向けではありません。性行為時にローションを使用すると、膣内にうるおいを与えるどころか、逆に膣の水分を奪ってしまう可能性があります。
性交痛緩和を目的にするなら女性の局部に塗ることを目的につくられた滑剤や潤滑ゼリーを使用するようにしましょう。
ホルモン療法以外で、性交痛を軽減する治療を受ける
更年期の性交痛を緩和するための治療は、以前ではホルモン補充療法(HRT)が主流でしたが、今では副作用のリスクが少なく、また効果があらわれるまでの時間が短い性交痛治療も、さまざま登場しています。
たとえばレーザーや高周波、超音波を用いた照射系の治療や、ヒアルロン酸を注入する注入術などがあり、症状や悩みに合わせて選ぶことができます。年齢や症状にあわせて最適な治療法は異なるので、気になる方は性交痛治療を行っている婦人科で相談してみるとよいでしょう。
満行みどり先生のアドバイス

更年期の膣の乾燥はある程度仕方ない部分も。ガマンせず医師に相談してください。
ガマンしているだけでは治らないのが萎縮性膣炎による痛みです。痛みの原因は膣分泌液不足や炎症。そのままセックスを続けていると、痛みに慣れるどころか痛いところに擦れてしまいます。また、痛さから行為自体が怖くなり、セックスレスになるおそれもあるため注意してください。
編集部のヒトコト
単純にアソコが濡れにくいだけなら、ほとんどの場合は前戯に時間をかけたり潤滑剤を使ったりすることで痛みを緩和でします。
まだ潤滑剤を使ったことがない人は試してみて、それでも痛みが消えない場合は婦人科へ相談に行きましょう。
監修
満行(みつゆき)みどり先生
女性器治療に特化した医師

みどり美容
クリニック・広尾
満行みどり先生
満行みどり先生は女性器治療に特化した「みどり美容クリニック・広尾」の院長。
ビバリーヒルズの専門トレーニング施設でライセンスを取得した日本人女性初の医師でもあり、デリケートゾーンの悩みを抱える患者さんに適切な治療を提供したいと日々尽力されています。